申し込みの順位が確定しにくい繁忙期では、とりあえず申し込みをして物件を仮押さえしようと考える人も多いのではないでしょうか。
でも賃貸で申し込みをした後に、キャンセルすることは出来るのでしょうか?契約前であれば問題ないと安易に考えると実はかなりリスクがあります。キャンセル料(損害賠償)が発生するケースや、キャンセルできないケースなどもあるので注意が必要です。
この記事では申し込みから契約までの流れを踏まえて、どのタイミングまでであればキャンセルが可能かをしっかり解説していきます。
それでは早速、賃貸が申し込み後にキャンセルできるか、結論から解説していきます。
結論は、一般的には契約書への署名捺印まではキャンセルできます。
賃貸の契約には不動産会社の有資格者による「重要事項説明」を行うことが義務付けられています。
不動産の賃貸借契約は諾成契約(口頭による約束)で成立するとされていますが、一般の借主に重要事項を契約に先立ち説明し、合意を得ることを不動産業者は義務付けられている為、契約成立の全ての要件は満たされていない状態と言えます。
申し込みをキャンセルした場合、原則としてキャンセル料は発生しません。
原則として、と記載した理由は(3)申込から契約までの流れ【審査通過】で解説しています。
不動産会社によっては、申し込みをする際に「申込金」と称して、数万円から賃料1ヶ月分を預け入れるように求めてくるケースがありますが、「申込金」は預り金の扱いである為、不動産会社は必ず返金しなければなりません。
「キャンセルの場合は申込金は没収する」などと返金出来ないと言ってくる不動産会社があった場合、明らかに宅地建物取引業法に違反していますので(宅建業法47条の2第3項)、都道府県庁の不動産相談窓口に相談するなどして必ず返金を受けましょう。
申し込みから契約までは、下図のように進みます。
物件を内見し、気に入った物件があれば、申し込みを行います。申し込みは、指定の書式に、必要事項を記入し、あわせて審査時に必要となる添付書類を提出します。このタイミングでのキャンセルは可能です。
申込書の記入については関連記事で詳しく説明しているのでご確認ください。
【関連記事】後工程をスムーズに!必要書類を事前に準備
申し込みを行うと、申込書の内容をもとに貸主(大家さん)や管理会社による入居審査を行います。
入居審査の目的は、申込者に家賃の支払い能力があるかどうか、連帯保証人または保証会社を付けることができるか、入居後にトラブルを起こさないかなどを確認するためです。
このタイミングでのキャンセルは貸主(大家さん)の審査結果が出る前の段階である為、可能です。入居審査については関連記事で詳しく解説していますのでご確認ください。
【関連記事】賃貸の審査を通すポイントとは?!収入の目安やNG理由も徹底解説!
審査を通過すると、貸主(大家さん)は申込者の入居希望を承諾したことになります。
この段階で申込者の借りたいという意思と、大家さんの貸しても良いという意思が合意したことになる為、諾成契約(口頭契約)は成立したと考えられます。
ただし申込者の不動産についての知識は、貸主(大家さん)や不動産会社ほどありませんので、申込者を保護する目的で、対象物件に契約するか最終判断する為に、契約前に宅地建物取引士による重要事項説明を受ける機会が設けられています。ですので、一般的にこのタイミングでのキャンセルは可能です。
何故、一般的にと付け加えているかというと、例えば申し込みにあたって、貸主(大家さん)にエアコンを1台増設するなら契約すると交渉をして、それを貸主(大家さん)が承諾し、エアコンを新設したにも関わらず、一方的に申込者がキャンセルした、など貸主(大家さん)にその時点において損害が発生している場合は、その賠償責任を問うことは可能だからです。
設備などの追加だけではなく、例えば審査通過から契約まで海外から帰国する為、2か月間待って欲しいと交渉し、貸主(大家さん)が承諾したにも関わらず、契約直前にキャンセルしたなどの場合は、その期間募集を停止していた分の家賃相当額を損害賠償として請求することは可能です。
民法には「信義則」契約を結ぶ際に当事者は「成立に向けて誠実に対応しなければならない」という大前提がある為、このような借主側からの不誠実な対応があった場合、貸主(大家さん)は申込者に損害賠償請求することが可能になるわけです。
実際に平成20年1月31日に東京高裁で「貸主が契約の成立を信じて行動することが借主に容易に予想されるのに、契約の成立に至らなかった際、借主の過失が認められた判例があります。(東京高判 平20・1・31金融・商事判例1287-28)
ですので、設備の補修や追加、敷金礼金の減額や、賃料や日割り発生日を遅らせる交渉も含め、「申込時に交渉した場合のキャンセルはしない」という点は大きなポイントとして抑えておきましょう。
参照:一般社団法人不動産適正取引推進機構
契約前に本当にその物件に契約するか判断できるようにする為に行う重要事項説明。
図面や内見をしただけでは判断できないような重要な事項がある場合、宅地建物取引士は契約前に説明する責任があります。
重要事項説明で初めて知り得た情報によって、契約しない判断を下すことは可能です。ですのでこのタイミングでのキャンセルは可能といって良いでしょう。
ただし、図面や事前に説明を受けていた内容を重要事項説明のタイミングで納得できないと言うのは不誠実です。審査通過の時点で諾成契約が成立していることは前述の通りですので、重要事項説明のタイミングなら、なんでもキャンセルできると考えてはいけません。
「信義則」をもって誠実に対応することが前提です。 重要事項説明については関連記事で詳細を解説していますので合わせてご確認ください。
【関連記事】賃貸の重要事項説明で注意すべきポイント10
重要事項説明の後は、いよいよ契約です。
契約書の読み合わせを行い、署名捺印をすれば正式に契約成立となります。この時点で、契約金の支払義務、その物件に入居し入居期間中家賃を支払う義務が確定します。
「鍵の引き渡しを受けていない」「契約金を支払っていない」からキャンセル可能という考えは誤りです。契約は成立しているのに、その責任を履行していない状態でしかありません。ですので契約成立後からのキャンセルは出来ません。
契約書の署名捺印後にキャンセルができるのでしょうか?前述の通り契約書の署名捺印後のキャンセルはできません。
契約後のキャンセルは「解約」の扱いになります。賃貸は2年契約であることがほとんどである為、途中解約にあたります。これは鍵の引き渡しを受ける前であっても同様です。
万が一契約後に解約する場合、どのような費用が発生するでしょうか。下表にまとめました。
このように原則、通常の解約と同様の扱いとなる為、契約金の返金はほとんどありません。敷金礼金の相場については関連記事で詳しく解説していますのでご確認ください。
【関連記事】敷金礼金なしのデメリットは?本当にお得か検証しました!
敷金は、原状回復費用の預かりと、万が一家賃滞納があった際の貸主への担保が目的です。ですので入居前に解約した場合は、基本的に全額返金されると考えて良いでしょう。ただし、一度でも入居した場合は、原状回復費用を請求される可能性が高いと考えましょう。
礼金は契約成立時に貸主に謝礼として支払うお金である為、返金はありません。
賃貸の契約には、解約告知期間といって、「途中解約する場合は、何ヶ月前に通知すれば認めるという」という特約が設定されていることがほとんどである為、賃料起算日から告知期間分の家賃以外は返金されると考えて良いでしょう。
保証会社の利用料は返金されないケースがほとんどです。詳細は保証会社の約款を確認しましょう。
仲介手数料は契約成立時の報酬として、不動産会社に支払うものであるため、契約成立後に返金されることはありません。
火災保険は契約期間に合わせて加入するケースがほとんどで、保険会社によって規定は違いますが、解約後一部返金があります。
鍵交換がすでに実施されている場合には、返金はないと考えるべきでしょう。
契約時に特約として短期解約の違約金が設定されている場合は、その違約金を別途支払わなければなりません。短期解約違約金については関連記事で詳しく解説していますので合わせてご確認ください。
【関連記事】 賃貸の重要事項説明で注意すべきポイント10・(6)短期解約の違約金は設定されていないか
このように契約成立後の解約では、契約金の返金はほとんどありませんので、十分に注意が必要です。
ここまででキャンセルは安易にするべきではないことはお伝えできたと思いますが、致し方ない理由でキャンセルせざるおえない場合に注意すべきことを解説していきます。
キャンセルをする場合は、とにかくすぐに伝えることが重要です。申し込みから審査通過までは2営業日から4営業日くらいが一般的ですが、物件や貸主(大家さんん)によっては即日に審査結果がでることもあります。審査通過後は諾成契約が成立したことになるという点は前述しています。とにかく早く伝えることが何よりも重要です。
キャンセルの可能性が少しでもある場合は、交渉は絶対にしないこと。前述していますが、特に設備や内装の変更などの場合に貸主(大家さん)に実損が発生し、損害賠償の対象になる可能性があります。契約日の後ろ倒し交渉も、その期間の機会損失という損失を発生させる可能性がありますので、キャンセルの可能性が少しでもある場合は交渉はご法度です。
キャンセルを複数件することは絶対に避けましょう。
複数の不動産で申し込みをして数社キャンセルをするという場合でも、申し込みした不動産会社は別でも、管理会社や保証会社が同じこともありえます。
同時に複数物件の申し込みがあった場合、まず審査は通らないと考えて下さい。また不動産会社は契約成立時にはじめて仲介手数料を成功報酬としていただくことができます。物件提案や内見に時間を費やしても、キャンセルとなれば報酬はゼロです。複数件のキャンセルはモラルとして避けるべき行為でしょう。
また複数の物件に申し込みをして万が一キャンセルすることを忘れてしまった場合、審査通過し契約準備など様々なことが進んでしまった場合、多くのリスクを負うことになります。くれぐれも複数件のキャンセルだけは行わないようにしましょう。
キャンセルの理由が致し方ないことであれば、貸主にも説明がつきます。不動産会社も理解してくれるでしょう。キャンセルする場合は誠実に、キャンセル理由を伝えるようにしましょう。
最後にキャンセルした際のリスクについて解説します。
申し込みのキャンセルが過去1件でもあると審査を通さない不動産管理会社があります。その場合、金輪際その管理会社の物件に住むことはできなくなります。
また保証会社もキャンセル履歴をデータベースに保存している為、審査で不利に働く可能性があります。ここ最近では保証会社の加入が必須である物件が、全体の8割から9割程度まで増えてきています。そして保証会社は保証業協会に加盟しており、データベースを共有していることにも注意が必要です。
キャンセルがあまりにも多い場合、賃貸物件を借りることが難しくなる可能性もあります。十分注意が必要です。
何度も解説している内容ですが、審査通過後は諾成契約が成立していることになる為、貸主(大家さん)に実損が生じている場合に損害賠償を請求される可能性があることは、とても大きなリスクです。
将来に向かっての損害まで責任は及ばないというのが判例ですが、実際に申込者の希望により、入居に向けて特別なコストが発生している場合、貸主(大家さん)の損害賠償請求を認める判決が裁判で出ています。この点は最も注意が必要です。
実際に時間も労力もかけてサポートして、急に予期せぬキャンセルがあった場合、不動産会社の担当者は辛いものです。
不動産の仲介は、契約が成立してはじめて報酬を受け取ることができる為、タダ働きになってしまいます。キャンセル理由に正当性があれば、もちろん致し方ないと理解する人がほとんどですが、不動産会社によっては態度を急変させる人もいるかもしれません。不動産会社にもいろいろな人がいます。注意しましょう。
以上、賃貸で申し込み後のキャンセルは出来るの?キャンセル料はいくらかかる?についてでした。
キャンセルが可能なタイミング、キャンセルが出来ないタイミングはとても重要なポイントです。またキャンセルする際の注意点も、とても重要ですので意識していただければ幸いです。
とは言え、とくに繁忙期では、人気物件の申し込みが重なりなかなか思うように契約に進めないことが多いことも理解しています。不動産会社の担当者と、しっかりと連携をとって理想の物件を見つけ、しっかりと契約まで進められることを願っています。
東急沿線で物件をお探しでしたら、是非バレッグスにもご相談ください。経験豊富なスタッフがしっかりとご対応させていただきます!それでは最後までご覧いただきましてありがとうございます。
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